創薬プラットフォーム

当社の創薬プラットフォームは、最先端のスーパーコンピューティング技術、先進的な構造解析技術、革新的な創薬技術や創薬標的をもたらす提携、グローバルで機動的なネットワーク型研究体制を統合したものです。これが当社の効率的かつモジュール型で拡張性のある創薬エンジンを形成しています。

スーパーコンピューティング

当社の高度なスーパーコンピューティングプラットフォームは、GPUによって加速された物理シミュレーションエンジンや超大規模スケールのバーチャルスクリーニング法、創薬に特化した機械学習アルゴリズムなど、多くの化合物や創薬標的の評価を精度よくかつ大規模に実施可能な最先端のスーパーコンピューティング技術を統合したものです。

当社のプラットフォームは、溶媒中でのタンパク質のふるまいについて正確かつ動的なシミュレーションを可能とするため、リガンド分子の結合や化合物の結合エネルギー状態に重要な役割を果たし、溶媒とタンパクの複雑な相互作用などに寄与する、タンパク質の動きの正確な予測に優れています。

また、物理学を正しく反映した自由エネルギー摂動法に基づくシミュレーション手法によって、実際の実験と同等の精度での化合物の作用強度予測が、化合物の合成や実験による評価にかかる費用のごく一部で実施可能です。

さらに当社のプラットフォームでは、100億化合物を1日で評価できるほどの前例のない規模と効率性で、超高速なバーチャルスクリーニングの実施が可能です。これにより、通常実施される実験による化合物探索のためのハイスループットスクリーニングに比べて、約10,000倍もの多様な化合物群を対象としたスクリーニングが短期間に実行可能です。

加えて、当社は独自の活性予測アルゴリズムとして、ModBind™の開発に成功し、すでに多くの創薬プロジェクトに組み込んでおり、臨床候補化合物発見をさらに加速しています。

先進的な構造解析技術

当社は、ユニークで高質な創薬標的の3次元構造の取得に力を入れており、それにより我々のスーパーコンピューティング技術の創薬への最大活用と、独自かつ優位性を有した創薬ポートフォリオの構築が可能となっています。

当社は、タンパク質結晶化を通じた標的構造の解析に加え、最先端の低温電子顕微鏡法(Cryo-EM法)のトップレベルの研究者との深い協働を介して、これまで解析不可能だった創薬標的の構造を解き、その標的に対する新しい創薬を進めています。また、AIを含めた様々な技術を利用した構造のモデリングも行っています。

すでに当社は、全くの新規のものを含む100以上の独自の創薬標的構造および化合物結合構造を保有しており、創薬標的構造情報のレパートリーを日々増強しています。

提携先との戦略的協働

当社はパートナーとの密な連携により、当社の創薬プラットフォームと外部の様々な技術・研究プラットフォームとの革新的な組み合わせを積極的に実現してきており、加えて、提携による候補化合物や新たな生物学的なアプローチの取り込みも進めてきております。

中でも、ペプチドリームとの戦略提携では、同社の独自技術であるPeptide Discovery Platform System (PDPS)と当社の創薬プラットフォームを組み合わせることで、これまで創薬が困難と考えられてきた標的や実現が難しかった化合物プロファイルに対して、新たなアプローチによる取り組みを行っています。この提携では、PDPSによって得られた選択的かつ強力なペプチドをプローブとすることで、新たな標的構造や化合物結合サイトを発見し、当社における様々な標的に対する新たな低分子化合物の探索に役立てており、先行プロジェクトでは、すでに臨床候補化合物を見出すに至っております。

当社では、ペプチドリームとの提携に加え、様々な最先端の研究・技術分野で多くのパートナー企業やアカデミアと、低分子創薬に資する高質な提携を追求しています。その一例として、ハイパフォーマンス・コンピューティング領域で高度な技術を有する富士通株式会社との共同研究により、理化学研究所と富士通株式会社が共同で開発した世界トップクラスの日本のスーパーコンピューター「富岳」上で、大規模バーチャルスクリーニングのさらなる加速化に成功した実例があります。また、山梨大学・北海道大学などのアカデミア研究者とも、アレルギー疾患や血管炎など、大きな未充足医療ニーズが存在する疾患群に対する新たな治療法の可能性を広げることを目的とした協働を行っております。当社が生み出した化合物を用いた協働の成果の一部については、Nature Communicationsを始め、すでに複数の科学誌に論文として掲載されており、科学的な評価も得られております。

グローバル・ネットワーク型研究組織

当社は、機動的かつ拡張性のある創薬研究オペレーション体制を構築しています。ここでは、少数精鋭で経験豊富な当社の研究者が、多数の創薬パートナー企業や著名な研究者たちと協働しています。

当社は、長年の製薬業界でのグローバルな経験により培われた、多彩な専門家とのネットワークを利用し、当社の創薬パイプラインを推進するのに必要な疾患生物学の知見や最先端の技術など、必要な機能のエキスパートにアプローチしてきております。

これらにより、当社の創薬パイプラインの進捗に応じて変化するリソースのニーズに対応して、迅速かつ柔軟に研究体制を変化・適応させていくことのできる、効率的なネットワーク型の研究オペレーション体制を実現しています。